トワ・フルール叢書

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トワ・フルール叢書1『レインドロップ』 大塚亜希

 

キスをしてふっと左を向く癖を世界でわたしだけが知っている

殺さない選択をするわれら故刃物を持つこと許されている

宇宙人なんかいないとうそぶけばきっと孤独な七十億人

紅を差す筆の動きのやわらかし大事に大事に「花嫁」になる

二人居のしろき魔法の食卓よ「わさび」と言えばわさび出でくる

 

 

旭図書刊行センター刊 ¥1,300E+送料


トワ・フルール叢書2

『REALISM 現代の写実』 内田弘

 

時代を見据えて大胆に詠うことが、現代に生きる我々の「写実」ではないのか。

丸ごと「生活」の場から歌い続けることが重要なことではないのか。

時代に沿って鋭く表現することが、私たちに課せられたことではないのか。

(帯文より)

 

 

 

旭図書刊行センター刊


トワ・フルール叢書3『君が坂道駆けくれば』 吉田理恵

 

通勤の朝に通る啄木が勤めし小樽日報社前 

 潮風が詩集のページをめくるから運河のベンチにまたひと休み

 観覧車解体されて築港の空ひろびろと秋の近づく

 若き日の君にふいに会えそうな南小樽の駅に降り立つ

 海を背に君が坂道駆けくれば過ぎにし年が巻き戻りゆく

 

 

 

旭図書刊行センター刊 ¥1,200E+送料


トワ・フルール叢書4『漂泊の街』 内田弘

 

滴りて光を受ける氷柱が北の庇で今日も太りぬ

人と時間が行きつ戻りつ地下街の吾はいつも漂泊のなか

蛍烏賊を食いたる後を巷ゆくネオンの酒場に我らも光れ

人前に晒す社に願い札が七月の風にひらり反転

平成の凧は次第に共謀罪の罠に嵌まるか

 

 

 

いりの舎刊 ¥2750+送料


トワ・フルール叢書5『あるはなく』 千葉優作

 

見上げれば虫に食はれたところから空に変はつてゐるさくらの葉

ハンガーは何も言はずに吊るされてかくも静かな労働がある

ずつとゆふひをながめてゐたい ほんたうに行きたいところには行けないし 

かなしみを誰にでも言ふひととゐて手持ち花火の火を分け合へり

アキアカネその二万個の複眼に映る二万の夕焼けがある

 

   

 

 

 青磁社刊 ¥2420+送料


トワ・フルール叢書6『今、此処』 稲澤壽美子

 

教会の鐘の音聞きて育ちゆく紅きチューリップは春の盛りに

賛美歌の歌へぬ日々のコロナ禍よミサの節ごと心が歌ふ

さみどりの水色美しき新茶受く三煎茶味はひ今日のスタート

食卓に花と赤飯と杯ふたつ八十夫婦の結婚記念日

楽山の遠く背後に室蘭岳よ四季の移ろひをわが家より眺む

 

 

 

 

旭図書刊行センター刊 


トワ・フルール叢書7『くうそくぜしき』 大塚亜希

 

もうずっと転がっている空き缶のコレカラココカラこころ閉ざすな

夕焼けの赤を怖がり泣いた日があった母さんの手を握りしめ

凍る日の雪のさらさら君のこと好きと何度も言ったさらさら

雨降れば空とつながる心地して約束のない日は暮れてゆく

はじまりは針孔に糸通すこと光に向かってゆく糸の先

 

 

 

ながらみ書房刊 ¥2640+送料


トワ・フルール叢書8

『REALISM 現代の写実Ⅱ』

内田弘

 

現代を生きる我々の「写実」とは、「生活」の実際をつぶさに点検しその中から「詩」を生み出すことではないか。時代をとらえ、鋭く表現することが、今こそ歌人に求められることではないか。そんな思いに駆られ、第Ⅰ集に続いて纏めたエッセイ集である。

(帯文より)

 

旭図書刊行センター刊